人生色々!ぽんちの山あり谷あり読書日記

こんにちは!ぽんちです。当ブログでは、私の読書記録をゆるく主観的に書き記していきたいと考えております。本との出逢いは、人生を変える。素敵な読書ライフを提供します!

本日の読書記録〜シャイロックの子供たち〜

本日は、再びとなりますが、池井戸潤さんによる「シャイロックの子供たち」についての読書記録です。

https://www.amazon.co.jp/dp/B00E7PC02K/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

当著書は、東京第一銀行長原支店に勤める様々な銀行員の日常風景を、銀行員の立場から描いた作品となっております。商業高校卒業後、30年余り銀行に勤めてついに副支店長にまで昇格した古川、御曹司に恋をする真面目で実直な北川愛理、それを支える飄々とした上司である西木、長原支店を業績面で支えるエリートバンカー滝野など、色の異なる銀行員が主人公として本作品に登場します。

 

当作品では、「組織の論理」の圧力に屈さないよう争う姿勢を見せる若手と、「組織の論理」の罠にハマった中堅、そして「組織の論理」に従順な古参の3タイプの人間模様が描かれております。

 

今回の作品では、若い頃程「バンカーとして顧客の価値になるようなサービスを提供すべき」という純粋なモットーのもと働いているが、年を喰うほど自己中心的なものさしで価値を測るようになり、ひいては「自分が昇進できるかどうか」で物事が解決されてしまい、そこには本来の銀行の使命たる「間接金融の担い手として日本経済を支えること」が無視されていると感じました。「業績をあげるかいなか」が判断軸の全てになっている、そんな雰囲気が読み取れました。銀行員という職は、世間一般的に見てもエリートで、誰でもなれるような職業ではないと思います。はたからみれば、一流大学を卒業して、日本のために頑張っていらっしゃる方々なのではないかと思います。ただ、本作品を読んでいると、銀行という世界の狭さからくる、息苦しさを感じました。同期との評価、追い上げてくる後輩達、そしてその評価・地位の影響が自身の家族へも影響を及ぼしてしまう・・・。評価と昇進に悩まされる毎日。息苦しさを感じるのは私だけでしょうか。

 

一方で、企業戦士として各々立ち向かう勇姿を見て取れるのは面白かったです。モチベーションの源泉が「昇進の有無」に偏ってくる気がしなくはないですが、やはり、バンカーとして融資先が融資する事でビジネスをうまく回し、それで融資先から感謝されれば、「バンカーやってて良かった」と思うのではないかと思います。

 

話は逸れますが、今後定型的な仕事って何かにだいたいされる可能性が高くなると思うのです。というのも、型が決まっているからこそ、問題点が見えやすいからです。当然、その型を覚えるまでは何年もかかるかと思います(例えば適切な融資判断をできるようになるためには、企業分析から顧客から情報を引き出すコミュニケーションテクニック、稟議書によって相手を説得するスキルなど、多方面でのスキルセットが必要になる事でしょう)。だかしかし、獲得したスキルセットを崩壊させるようなイノベーションが発生した時に、どうしようもなくなるのではないかと思うのです。その型通りに仕事をする面では長けていても、その型が通用しなくなってしまったらどうだろうか。ある意味で振り出しに戻ってしまうような気がします。だから、型は型で覚えることは重要だけど、そのスキルなり思考力なりを他でも発揮できるよう、仕事以外というか、日々の思考回路を開けさせることにある程度意識を向けなくてはならないのではないかと思いました。

 

・・・と独り言をぼやいてしまいました。当作品では、花咲舞のような「オラオラァ〜!」とかっ飛ばすタイプの主人公は登場しませんが(笑)、今までよりリアルな様相が描かれていると思います。銀行のリアリティを、それぞれの役職・立場から眺めて見たい方にはオススメの作品です。

 

〜ぽんち's 評価〜

読みやすさ:★★★★☆

⇨分量も多くなく、また短編集になっているので、内容が頭にすっと入ってきます。

 

面白さ:★★★★☆

⇨シリーズものではないため、ストーリーテリングというよりは、他の作品と比べてより銀行員のリアリティさが描かれていたように思います。そこが面白さのポイント↑↑

 

組織の論理度:★★★★★

⇨とにかく、銀行は組織の論理で動いていて、一銀行員がどうこう言ったところで簡単には動かせない、そんな巨大な陰の力を本作品より感じ取ることができます。